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2019.06.12 創業者より

雑誌インタビュー転載「iruka開発秘話〜モバイル変身自転車が必要だった理由」

2019年3月30日発売のムック本「折りたたみ自転車&スモールバイクカタログ2019」(辰巳出版 1,080円)に掲載された、株式会社イルカ創業者/代表取締役・小林正樹のインタビュー記事を転載します。

 

 

 

「僕は通勤で折りたたみ自転車に乗り始めたので、街乗りに最適な製品を作りたいという思いが強くありました。当時乗っていた自転車も気に入っていましたが、使い込むうちに飽き足りない点が出てきて、結果として自分のブランドを立ち上げてしまいました。

 

思い描いた自転車を作るために、三つの必須条件がありました。『街乗りに最適な走行性能』、『収納しやすい折りたたみ形状』、『折りたたんだ状態での転がしやすさ』です。

 

まず走行性能。街乗りの特性として、東京をはじめ都市部はとにかく信号と交差点が多いですよね。例えば私は目白から青山に通勤していますが、幹線道路では信号が平均200mにひとつ、裏道の生活道路では交差点が100mにひとつあります。つまり発進と停止、徐行と加速が頻繁にあるわけです。

 

また、東京は意外に起伏に富んでいます。例えば山手線内でも一番低い品川駅は海抜2m、一番高い新宿駅は37mと、35mの高低差があります。五反田駅と目黒駅は隣駅なのに標高が21mも違います。臨海エリアも地形は平らですが橋のアップダウンが侮れない。例えば晴海大橋は最頂部まで20m登ります。

 

つまり街乗り自転車はスピードや安定性といった基本性能に加えて、こぎ出しの軽さ・加速しやすさ・止まりやすさ・変速しやすさがより重要になるわけです。これらを技術的に落とし込んで、フレーム構造とコンポーネントを検討しました。

 

一般的に折りたたみ小径車はヒンジ部と長いハンドルポストが剛性の弱点となって力をロスしやすい。そこで、トップチューブにヒンジがない折りたたみ機構を必須条件として考え、ハンドルポストも一般的な蝶番式ではなく差込式にして強度を確保しました。試乗した方は口をそろえて『ペダリングが軽くてよく走る』と言ってくれます。

 

ブレーキは止まりやすさでディスクブレーキの一択、変速機はワイドレンジで停止中も変速できる内装8段ギアを選びました。いずれも軽さは若干犠牲になりますが、躊躇はしませんでしたね。

 

次に折りたたみ形状について。前職では出勤時に折りたたみ自転車を社内に持ち込んでいましたが、折りたたんだ高さが65cmあり、机の下に入りませんでした。大手メーカーの規格は机の下のスペースの高さが62cmなんですね。さらに輪行するようになって、高さ50cmを切るようにしたいと思い始めました。新幹線は座面の前端から前席までの距離が50cm、座面の幅も50cmです。つまり幅と高さが50cm以内で、かつ縦置きできる形であれば、車両の後部スペースが空いていなくても自分の席で運べると気づいたのです。

 

三つめの転がしやすさ。前職のオフィスは「大手町ビル」という横長で有名なビルにあり、時には折りたたんだ状態で廊下を200m近く運ぶ必要があってうんざりしていました。小さなキャスターが付いた自転車も試してみましたが転がしにくかった。であれば、せっかく自転車には車輪がふたつ付いているのだからそれを活かせないかと。こうして、前後輪がフリー状態で平行かつ同軸上に折りたためるという条件が加わり、片持ちフロントフォークが導かれました」